近況報告、というか自分がこうしておけば良かったな、と思う事。
■はじめに
このページを見ているあなたは多少なりとも高専という存在に興味を持ち、或いは車や飛行機など、機械に興味を持っていて、将来は世界的に有名なエンジニアになろう。とか、世界最速の電気自動車を作るんだ。など大きな夢を持っている方もいるかもしれない。大いに結構。あなたが中学生ならば、全ての道は開かれています。あなたが信じきれば夢は叶います。私は2002年度に卒業した井上善雅という者です。もう卒業から9年以上経ち、倍くらい歳の離れた中学生に何を話したらいいだろう?と少し戸惑いましたが、私の生きてきた29年間で得た知識を偶然にもこの文章を読んでくれた中学生のあなたに捧げます。
この場を借りてこういった機会を与えてくれた三谷先生に感謝いたします。また高専の5年間で私に知識と生きる力を与えてくれた全ての先生、友人に感謝いたします。ありがとうございます。
前振りが長いですが、一般的な説明については他の卒業生の文章を参考にして下さい。高専生活、会社生活について良く書かれていて、とても参考になると思います。私の文章については、中にはこういう変な人もいるんだ、ぐらいの程度で読んでください。
■高専の5年間とは
一言で言えば人生最後の自由時間です。専攻科/大学/大学院に行く人に関しては延長されますが。大学に行く人は4年生の後半〜5年生の前半に勉強する必要がありますね。他は、基本的に自由です。
【海外旅行の勧め】
夏休みは約50日間前後あります。バイトするもよし、部活に打ち込むもよしですが、個人的には一人で海外旅行をお勧めします。英語が話せなくても関係ありません。後進国であれば現地でお金はさほど必要ありません。もちろん航空機代はそれなりにかかります。自力で稼ぐのもカッコいいのですが、親に出してもらうのが手っ取り早いのでは?と思います。数年後、親孝行してあげればOKと思います。出来ればツアーは避けて自力で旅してください。結果的に手間と余計なお金が掛かるのですが、困難に直面して、問題を解決する事が自身の急速な成長に繋がります。
【立場をフル活用】
1年生だからまだ将来とか考えなくていいよなぁ、とか、適当にやっていれば就職できるだろう。というのは少なくとも私の年代では正解です。ただ、それでは面白くないので、例えば興味のある分野を担当している教官の部屋を訪れ、自分の疑問や将来への不安を質問すると、喜んで色々話してくれると思います。機械科に入学したからといって機械科に限定する必要はなくて、他の科の教官でも全然構わないと思います。意欲さえ伝われば、チャンスの可能性が色々広がって、他の学生には無い情報を得られたり、対外的な活動に出席できる可能性もあると思います。
【卒研は就職前に自分を高める最後の場(編入学者は除く)】
私の所属した三谷研究室は基本的に答えが無く、「こんな風にやってみて」、とか「この本の通りにやればうまくいくはず」とか、そういう曖昧な指示ばかりで、良く分からないからといって状況を放置すると、極端な話卒業までその状態です。実際そんな学生もいたことでしょう(?)が、それではもったいないので自ら考え、無理なら妥協案を考える、どこが分からないのか明確にする、などして道を切り開かないと前に進みません。これは会社でも人生でも同じことです。基本的に大人になってからは、答えなど無いことが多いですから、卒研をきっかけに自分を高める場として下さい。私は卒論発表の数日前に少し難しい制御系のプログラムが正常に稼働し、舞い上がるほど嬉しかった事を覚えています。
 |  |
卒業研究実験装置(DCサーボモータにおける適応制御) |
■会社とは
私はいすゞエンジニアリング鰍ナ国内大型トラックの配管設計を8年以上やっています。基本的に3年とか5年おきに配置転換があるのですが、私は運が良いのか悪いのか分かりませんが、入社以来ずっと同じ業務についており、組織の中堅として目下、7人の部下を抱えつつ、自分の仕事もやる、という辛いながらもやりがいのある立場についています。
【高専では基礎知識を身に着けよう】
仕事においてどんな知識が重要か。こう言ってしまうと高専の諸先生方に怒られそうですが、高専の高学年で習うような難解な数学や物理学、その他力学系は必要ありません。その代わりに基本的な事項、例えば応力は何に依存するか。固有振動数は何に依存するか、トルクとは?どは頻繁に使います。他の職種でも言えますが、学校の知識と会社で使用する知識は異なることが多いです。もちろんどちらも正しいのですが、学校で習ったことと違う、などと思わずに、先輩から得た知識を素直に洩れなく吸収することが重要です。自然と学校の知識と融合する日が来る気がします。
【コミュニケーションが大事】
私は朝会社に出社してから夜帰るまで、しゃべり詰めの日も少なくありません。決してサボっている訳でなくコミュニケーションが仕事を進める上で最重要である事を示しています。例を挙げれば、会議で自分の意見を主張する(プレゼン)、質問する。部下と業務の進め方を確認する、上司に今の状況を説明する、他部署との日程調整、サプライヤー(部品メーカー)との打ち合わせなど、になります。私はそもそも話す事が得意なキャラクターではありませんでした。しかし会社に入って仕事を進めるうちに、コミュニケーションを怠ることで様々な障害が発生し、逆にコミュニケーションを取ることで円滑に業務が進むことに気づき、今に至ります。私の会社は名前の通りいすゞ自動車と密接に関わっており、自分の担当する大型トラックは何万もの部品にて構成されていて、関係者はサプライヤーも含めれば数えきれない程、恐らく何千人もの協力により成り立っているので、自分一人の力は小さなもの。その反面、声を挙げて協力をしてもらえば、自分の力が何倍にもなるのです。
【英語は身に着けておいた方がいい】
週に2回、1.5時間、会社のお金を使わせてもらってTOEICの勉強をしています。非常にありがたいのですが仕事も忙しく土日も遊びほうけていて、しかもこんな近況報告の仕事も入って(!!)毎回宿題もこなせずに怒られている状態です。。。。英語が出来るからといって、明日から人生が変わる訳ではありませんが、人生の幅が確実に広がります。短期間で身に着くものではありませんが、ある程度のお金は惜しまずに、継続的に英語を勉強して、高専卒業までに通常会話をこなせるようになっていると、必ず良い事があります。
【主な業務】
2010年式大型トラックのエアタンク設計を担当しました。トラックは用途によって車の長さ、タイヤの位置、タイヤの数などに各種バリエーションがあり、大まかに言ってもレイアウトは5バリエーション、細かく言うと50バリエーションぐらいあるのでは?と思います。2010年式はフルモデルチェンジなので現行2007年式から全て設計変更が入ったので、やる事も非常に多く、毎日深残業の日々で、もう2度とやりたくありません。しかし街中を見れば私の設計したエアタンクを搭載したトラックを見ないことはほとんどありません。予定通りであれば、私の設計したレイアウトは少なくとも2020年前後まで作られ続け、一部は輸出向けにも転用されるので、大げさに言えば自分の作品が世界中を走り回っていて、毎日増殖を続けていることになります。
上記が私が考えるエンジニアの特権だと思います。会社の機能を大まかに分ければ本社機能(企画・立案)、開発機能(設計・実験・試作)、生産機能(製造・品質管理)その他すべての機能は会社に必須だから存在していて、どの仕事が上とか下とか、無いのですが、自分の描いた線が具現化して世に出る、というのは設計以外では得られない、手放しがたい権利です。
中央左奥が私です.http://www.isuzu-iec.co.jp/service/haikan.html
■相談/質問・・・気軽にどうぞ!
お世話になった教官方に検閲(?)される事を恐れ、これでも遠慮がちに書いています。。何か悩みや分からないことがあれば何でも相談してください。私の中学校からは高専進学者は私1人で、受験のときも合格した後も誰にも相談できず、心細い心境だった事を思い出しました。zan60221@gmail.com(@は半角に置き換えてください)