沼津高専 専攻科 機械・電気システム工学専攻機械コースの紹介 本文へジャンプ
変動負荷速度下における脆性材料の破壊強度評価のための確率論的アプローチ

 セラミックスは金属材料に比べて耐熱性・耐摩耗性・高比強度など優れた特性を有しています.そのためベアリング用ボールやセラミックス複合材料として航空宇宙分野に適用されています.しかしながら適用の拡大に伴い,予期せぬ破損が相次いて報告されています.これはセラミックスの信頼性が分かっているようで実はあまり分かっておらず,十分に使いこなせていないことを意味します.そこで本実験では変動荷重下での破壊を想定したモデリングを行い,脆性材料の強度信頼性評価法について検討します.


脆性材料
 脆性材料とは,ガラスや陶器のような塑性変形をほとんど生じず,破壊に至る材料のことを指し,いわゆるもろい材料です.脆性材料は金属材料に比べ,耐熱性・耐摩耗性・比強度(単位密度当たりの強度)など優れた特性を有しています.

セラミックス
 セラミックスとは,「非金属・無機材料で,その製造工程において高温処理を受けたもの」と定義され,陶器やガラス,ファインセラミックスなどを総称して「セラミックス」と呼ばれます.セラミックスは耐摩耗性・比強度に優れることから,図に示すようなベアリングボールへ適用されています.

セラミックボールを使用したベアリング

モデリング
 脆性材料の破壊は図に示すように,材料内部にあらかじめ存在する潜在欠陥からのき裂成長によって生じます.そこで,式(1)(2)に示す応力拡大係数と安定き裂成長則に基づき,脆性材料が変動荷重下で破壊するのを想定したモデリングを行いました.また,破壊強度は大きなばらつきを有するため,式(3)に示す2母数ワイブル分布を用いて統計的に評価します.

応力拡大係数

  
安定き裂成長則
  

2母数ワイブル分布
  



潜在欠陥からのき裂成長

実験方法
試験片
 
試験片には市販のソーダガラスを矩形形状に切り出したものを使用しました.試験片の寸法は
5w×4.8t×50Lとしました.

4点曲げ試験

 図に示すように試験片をセットして4点曲げを行いました.上スパンは
10mm,下スパンは30mmとしました.初期負荷速度はCHS(Crosshead speed)=0.05mm/
min
とし,目標応力値に到達後すぐにCHS=1mm/minに切換えました.

4点曲げ試験

実験値と理論値の比較
 実験結果のワイブルプロットと理論曲線を図に示します.実験結果は理論曲線と概ねよく一致し,モデルの妥当性が実証されました.
 この結果に基づき,本年度は他の脆性材料においても本モデルが一致することを実証するため,アルミナセラミックスを用いて同様の試験を行い,比較・検討を行う予定です.


実験結果と理論曲線

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