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企画・立案 |
この数年間,企業は利益を上げるために,製品開発のスピードを上げ,新製品を次々に発表しています.これに伴って,企業が求める働き手のタイプも変化しました.従来の「できる人材」とは,確実に業務をこなすことができる人でした.しかし現在は,確実に仕事をこなした上で,企業をよりよくするための企画・立案ができる人材が求められています.そこで,本実験では企画・立案の具体的な手法を学び,実際にあるテーマについて企画・立案を行って,その企画書を作成しました.
企画を効率よく練る際に用いられる手法に「発想法」があります.これは人間の思考パターンをうまく利用しており,「発散」と「収束」の2工程から構成されています.
「発散」とは,浅く広く考えを広げる思考の働きです.
「収束」とは,考えを分類し,整理する思考の働きです. |

「発散」と「収束」の構図 |
では,実際に行った企画・立案に沿って説明します.テーマは「新しい文具の開発」です.
まず,どのような文具があれば便利か,誰が使うのか,どこで使うのか,どこでなら買ってくれるのかなど,自由な発想でテーマについて意見を出します.これは「発散」の具体的な手法の一つで,「ブレインストーミング」と言います.
実際にこれを行うと,右の図のように,テーマに関するさまざまなアイデアを出すことができます. |

ブレインストーミング |
マインドマップとは,テーマから放射状に意見の枝をのばした図のことです.ブレインストーミングの際に上手に描くと,常にアイデアの整理を行うことができます.また,全体を見ることで,アイデアの偏りがない,バランスの良いブレインストーミングを行うことができます.
今回のテーマ「新しい文具の開発」のブレインストーミングは,マインドマップを描きながら行いました.右の図はそれをまとめたものです.アイデアが見やすく,バランスが良いことがわかります. |

マインドマップ |
ブレインストーミングによって,実に様々なアイデアが出ました.これらの中からより良いアイデアを効率よく整理するために,1つのアイデアを1つのカードに書き写し,並び替えてグループ化しました.この作業を「KJ法」と言います.関連性の低いアイデアを除外できるため,実用性の高いアイデアを絞り込むことも可能です.
本実験で出されたテーマは,右の図のように分類されました. |

KJ法 |
これらのアイデアから,最終的に次のような製品を企画しました.
商品名 :新-THIN- バインダー
ターゲット :大学ノートおよびルーズリーフを使用している人全般が該当.おもに学校関係者(学生,教授など).
概要 :現在販売されているルーズリーフ用バインダーの背幅の最小厚さは15mmで,大学ノート4冊分に相当する.これを,バインダーのリングを折り畳み傘の柄に代表される蛇腹方式を採用することで,約半分の厚さにする.
価格 :バインダー価格を市場価格を参考に500円に設定.
利益予想 :現在ルーズリーフを使用する学生を,日本の全高校生,大学生(計620万人)の半数と仮定し,さらにその中で購入者を1%と仮定すると,1億5500万円の売上げが見込める.
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本実験では4回の実験を通して,「新しい文具の開発」の他,「回路の仕組みを理解させる授業」,「卒業研究の計画」というテーマに対して企画・立案を実施し,企画書を計3枚作成しました.とてもハイペースな実験でしたが,実際の企業では,この一連の作業が当たり前のように実施されています.これらの手法の重要性と,企業の開発速度を身にしみて感じた実験でした.
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