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工学教材としての利用の簡便性を考慮したDCモータ制御装置の開発 |
近年,電気自動車などが実用化され,様々な用途で利用される時代となりました.それに伴って,沼津近隣の中小企業では,電気や制御の知識を持つ機械系の技術者を必要としているという話を聞きます.一方,本校機械工学科では,最近の低学年における数学や物理の基礎学力の低下により,制御工学を好まない学生が増える傾向にあるとされています.
そこで本研究では,視覚的に理解できる制御教育教材を提供し,制御工学のすごさを実感することによって,基礎学力の大切さや面白さを感じてもらうことを目的としています.
本研究における制御教材では,PID制御という,微分積分学をふんだんに利用した制御理論を用いています.低学年ではPID制御はおろか,微分積分学自体を未学習です.したがって,理論的な解釈を求めることは不可能に近いでしょう.ゆえに本研究では,
PID制御をイメージで捉えやすい装置の製作を目的としたのです.さらに,理論的なオートチューニング機能を備えさせることを検討しており,現在,DCモータや倒立振子などへ容易に適用できる方法を模索しています.試行錯誤を必要とする手作業での調整が自動でなされるならば,より専門知識に対する学習意欲を向上させることができると考えるからです.
図1にDCモータ制御装置(DCMCS:DC Motor Control System)の写真を示します.装置が持つ機能は以下の6つです.
(1) モータ駆動(PWMのパルス幅調整
可)
(2) 円盤の穴と赤外線LED,フォトICに
よる回転数測定
(3) PI制御(フィードバックゲイン,目標
値の調整可)
(4) LCDによる表示(設定パラメータ,
回転数,回転速度,制御入力)
(5) 8連LEDによる2進数と偏差の表示(6) シリアル通信(EIA-232-D)
図2に装置回路の概略図を示します.
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図1 DCモータ制御装置

図2 回路概略図
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通常,制御用サーボモータは数万円と高価ですが,使用したモータは1個170円の模型用モータです.1台5,000円程度で製作可能です.図に示すように,たくさんの装置を用意できます.
さらに,模型用DCモータは,制御に用いることを想定してないので,動特性が容易に変動します.すなわち,一定入力を与えても定常状態(安定した状態)にならず,回転数が変動します.したがって,制御することの意味やオートチューニングの必要性が明確に理解できるでしょう. |

たくさんの装置
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図は,DCモータの同一入力におけるステップ応答(時間応答)を4回測定し,重ねた図です.この図から,用いたDCモータのステップ応答には,少なくとも約35%
のばらつきがあることがわかります.DCモータの場合,ヒステリシス性や不感帯,図のようなステップ応答のばらつきなどが存在するため,オートチューニングの手法の選定に慎重にならなければなりませんでした.オートチューニングとは,制御をどのように行えば良いのかを最適に決定し,調整することです.オートチューニングを行うためには,制御対象の伝達関数や状態方程式という数学モデルを推定する必要があります.現在,種々の理由からSelf-Oscillating
Adaptive System(SOAS)という方法を検討しています. |

DCモータのステップ応答 |
SOASは,モータの正転逆転を繰り返す必要があるため,現在H-Bridge回路というモータ駆動用の回路の実装を考えています.しかし,現在装置は,正転逆転を検知するセンサを有していないうえ,それらを実装するには装置の改良が必要となり,現在検討中です. |
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