◎磁気浮上装置の構成
本磁気浮上装置では、電磁石によって永久磁石にはたらく吸引力を制御する方式の磁気浮上を行います。
この方式では永久磁石の磁力により、少ない電流で磁気浮上を行うことができます。
浮上させる物体(以下浮上物体)の高さを検出するためのセンサにはホールセンサを使用します。
これは磁気センサであり、磁束密度に比例した電圧を出力するものですが、これを電磁石下部に取り付けることにより、永久磁石と電磁石の距離に依存した信号を得ることができ、これを距離センサとして利用します。
◎システム構成
ここで行う制御は演算量の少ない古典制御で、センサ信号を電磁石の操作量にフィードバックするPD(Proportional-Derivative)制御を行います。
電磁石はマイコンとドライバによってPWM(Pulse Width Modulation)制御します。よって電磁石の操作量はPWMデューティ比となります。
本装置はLCD(Licuid Crystal Display)と押しボタンを入出力インターフェイスとして、実験装置上で制御パラメータの調節を行うことができます。
また、自動的に浮上するパラメータをみつける機能もあります。
◎PSoCマイコン
本装置で使用しているのはPSoC(Programmable System on Chip)マイコンというマイコンです。
PSoCマイコンはCypress社が提供するマイコンで、レジスタの設定で内部構造を変化させることができるという特徴があります。
これにより、内部のディジタルの機能を持つ汎用ブロックと、アナログの機能を持つ汎用ブロックを組み合わせて、A/DコンバータやPWMパルスジェネレータなど、様々な機能を必要に応じて実現することができます。
また、GUI(Graphical User Interface)の開発ツールが無償で提供されており、容易に利用することが可能です。
PSoCマイコンを利用することについて、以下の利点が挙げられます。
PGA(Programmable Gain Amplifier)と呼ばれる、ソフトウェアで増幅率を調節可能なアナログアンプの機能が実現でき、部品点数を増やすことなくセンサ信号を増幅することが可能
信号の入出力を行うピンの位置を変更することができ、用途に応じた合理的な配線が可能
機能の拡張性が高く、開発過程における様々な変更に柔軟に対応できる。例えば、内部情報を電圧信号として取り出すためのD/A変換器の追加、あるいはシリアル通信機能の追加なども容易に可能
本装置におけるPSoCマイコンの基本的なはたらきを以下に示します。
- センサ信号を増幅しA/D変換して取り込む
- 制御演算を行う
- 演算結果に応じたPWMデューティをもったPWMパルスを出力する
- ボタンの押下を検出し対応した操作を行う
- 内部情報をLCDに出力する
◎浮上物体
浮上物体は永久磁石とおもりで構成されています。
下図に示すように、永久磁石はネオジム磁石を使用し、おもりはポリカーボネート製のボルトにナットやワッシャを取り付けて重さや重心を調節します。
このような構成にしてあるのは浮上を容易にするためであり、制御パラメータの調節に慣れてくればネオジム磁石単体での浮上も可能です。
◎磁気浮上装置の諸元
磁気浮上装置の諸元は以下の表に示すとおりです。
寸法(WDH) | 140×120×163[mm] |
重量 | 780[g] |
制作費 | 5,850[円] |
コントローラ | PSoCマイコン CY8C27443-24PXI |
センサ | ホールセンサ 東芝製 THS123 |
電磁石 | 鉄心φ22×25[mm] ケーシングφ48.6×29.5[mm] 巻線φ0.8[mm]エナメル線 巻数200 |
浮上物体 | ネオジム磁石およびボルトなど |
電源 | 9V乾電池1個 |
◎磁気浮上装置の機能
本装置は、ボタン操作により制御パラメータを調節して浮上状態をつくる基本機能に加え、以下の機能を備えています。
調節したパラメータを記録・読出する機能
安定浮上する制御パラメータを自動的にみつける機能
内部情報(A/D変換値やPWMデューティ比など)を電圧として出力する機能
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